中国の監視社会が手本

中国の監視社会

中国では道路や大きな施設などいたるところに顔認証機能付き監視カメラが配備されており、2020年までに6億2600万台になるという。

コンビニに入れば、どこのだれが入店したか把握されている。決済も現金ではなくほとんどスマホで行うから、誰がどんな買い物をしたかまで(国に)把握されることになる。

「顔認証」と並んで人々の行動に変化をもたらしつつあるのが「信用スコア」だ。いわば人間の格付けシステムで、SNSでの発信履歴、友人関係、購買履歴、ルール違反や犯罪歴などをもとにポイントが決められる。ポイントが高いと融資やデポジットで優遇措置があり、低いと鉄道や航空機のチケットさえ買えない。

この信用スコアは学歴や職業などの「身分特質」、支払い能力の「履行能力」、クレジット履歴などの「信用歴史」、交友関係などの「人脈関係」、消費の嗜好を表す「行為偏好」を独自のアルゴリズムで350点から950点の範囲で点数化する。場合によっては男女の交際や結婚相手の判断にも使われるという。

中国人民銀行は2015年1月、「芝麻信用」を含む8社に、個人信用ビジネスへの準備を促進する通知を発表したが、狙いはこの8社から政府の「社会信用システム」を担う企業が出現することだった。しかし金融取引、税、犯罪などにかかわる企業や個人の情報が含まれることから、公平性を担保できないなどの理由で、これら8社に機能を担わせることを断念、8社と中国互聯網金融協会が出資する「百行征信バイハンクレジット」に対して信用情報業務の免許を発行した。

政府の「社会信用システム」には借金踏み倒しなどの情報だけでなく、食品や医薬品の安全性、環境汚染などの情報に加えて、地方政府が保有する行政罰、判決情報、納税・社会保険料情報、交通違反情報などが組み込まれる予定だ。「信用」を失墜すると企業は株の発行、税制優遇措置、融資などが受けられなくなるほか、個人は航空機や高速鉄道に乗れなくなるなどのペナルティーが発生、現実にブラックリストに載った500万人以上が搭乗を拒否されたという。

「社会信用システム」により、身分証や戸籍情報、宗教・民族、学歴・職歴、口座情報、納税・保険情報、顔認証を中心とした生体情報、位置・移動情報、SNSを通じた発信履歴や交友関係、購買履歴、通信履歴、閲覧履歴などが紐づくことになり、欧米メディア・研究者による「超監視社会の出現」という「ディストピア論」の根拠となっている。

こんな国で暮らして、30年になる。在住外国人は人民が持つIDに当たるものがパスポートになる。私は新型コロナウイルス感染症が拡大する直前に出国して、1年以上中国に入国できていなかったが、いない間に生活上のデジタル化がさらに進んだ。外国人を含むすべての中国居住者は「行程卡」というアプリを携帯電話に入れておかないと、中国国内の通行ができない。